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まっきょんさんのハワイ島旅行記
     
 
その10:カメとの遭遇 (執筆者:きょんこ)

 昨日は本当に疲れた。本来ならホテルでゆっくりハワイ最後の1日を楽しみたいところだが、そうはいかない。だって、まだカメに会っていないから。昨日のツアーはさんざんだったけど、ひとつだけいいことがあった。それはカメの居場所が分かったことだ。マットさんはこの島の地元人なので、カメを観るなら「ここ!!」というスポットを知っていたのだった。しかもそこは、ガイドブックなどには載っていない秘密のリサーチスポットで地元の人しか知らないっぽい。だって、私達が行ったときも誰もいなかったもの。

 さて、ここできょんこのカメ好きについて述べておこう。きょんこは実はスキューバダイビングのライセンスを持っている。これは独身の頃とったのだが、結婚してからは随分と潜っていない。
 結婚前に友人とオアフに行き、ハワイカイというところで潜った時に、なんと海がめに遭遇した。それがカメと出会った最初だった。甲羅の大きさは直径1.5メートルくらいだろうか・・・、前方にゆうゆうと泳いでいる。でかかった!!陸の上のあの、のろまなイメージと違い、なんと水中での彼らの身のこなしの優雅なことよ。感動した。すごく可愛かった。ちいさな目でこっちを見ている。近くまで追いついて、甲羅を触ってみた。「さわってもいいよ」って感じでカメさんはそばに居てくれたけど、その後ものすごい速さで向こうの方に泳いでいってしまった。追いかけたけど、追いつかなかった。早い!!カメは水中では素早いのだ。知らなかった。

 そういうわけで、きょんこのカメ好きはその時から始まった。ハワイでもカメの飾り物とか(本物じゃないよ)カメグッズを集めたし、メールを始めたときにポストペットのカメを飼った。名前はみどりちゃん。可愛がってたのにパソコンがウイルス感染して、みどりちゃんも死んでしまった。ショックだった。
 新婚旅行の時もオアフには行ったけど、潜っていないのでカメには会えなかったし、今回はカメのメッカであるハワイ島で陸上のカメに接近してみたくカメスポットを探していた。

 2日目に行ったプナルウ黒砂海岸もカメが波打ち際に訪れるという情報だったが、曇っていたためかカメは現れなかった。スノーケリングの時も失敗に終わった。イルカには会えたけどね。ハワイに来たからには、どうしてもカメに会いたかった。マッキは火山が見れたから幸せだろうけど、私はそんなの嫌だ(マッキは石きちがいだからね・・・)。

 マット情報だと、カメは天気の良い早朝に日光浴をしに陸にあがってくるらしい。そのスポットは、なんちゃらベイという小さな湾で、カメが訪れるのではなくてカメが住んでいるところなんだそうだ。だから朝早くそこへ行くと、カメが100匹くらい波打ち際で日光浴をしていて、なんともすごい光景に出会えるという。まあ、ほら吹きマットの言うことだからちょっと信じられない気もするが。とりあえず行ってみようということになった。

 朝、さすがに疲れていて、思いのほか出発するのが遅くなった。もう朝日はとっくに昇っている。カメさんの日光浴が終わってしまう!!なんちゃらベイはホテルからは30分くらいのところだが、海に行くにはハイウェイに車を止め、1時間くらいトレイルを歩かなくてはならない。
 人間がつけた分かりにくい道を半信半疑で歩き始める。情報はマットの口から伝え聞いたものなので、はなはだ不安である。しかし確かに道の跡がついており、だれかが海辺に行くために利用していると思われる。そこをひたすら歩く。まるで日本のどこかの森の中に迷い込んだような不思議な感覚。ハワイに海に近いところとは思えない。でも鳥の声と、そこに生えている植物の種類が日本ではない。
 1時間ほど歩いただろうか。「ビーチへはこちら」の看板があり(ぼろぼろの)、道が開けて広いビーチに着く。曇っていたためか誰もいない。100匹のカメが群がる光景に胸を躍らせていたのにカメもいない。ただの海岸が広がっているだけ・・・。そんな。辛すぎる。またカメに会えないのか?

 しかたがないので、しばらくそこから左側に海辺をさすらう。どこかにいるかもしれないから。マッキはどんどん先に行ってしまい、きょんこは波打ち際にしばらく佇む。だんまり・・・。すると、向こうの方でマッキが手を振っている。
「カメがいるよ〜〜!!」
猛ダッシュで駆けつけると、寄せては返す波のまにまにUFOみたいに円盤がゆらゆら揺れている。直径は30センチくらい?小ぶりのカメが2匹、波に戯れている。
「いた!!」
やっぱり可愛い。時々,波の間に顔を出して,息継ぎする。
「ぷはっ」と音がする。
きゃはは。やっと会えたカメさん。でも、これだけ?2匹だけ?こんなにちっこいの?え?

 一応写真を撮って、元来た道を帰る。来るのが遅かったから、カメ達はもう海の中で泳いでいるんだよ。あの子達は、たまたま居残ったんだね。そういいながらふと立ち止まると、そこに1軒の小屋がある。良く観ると中に人が3人居る。こっちを観てる。そこは一応、日本でいうところの海の家みたいなもので、飲み物とかバーガーとか売ってる雰囲気だけど、なにせビーチには誰も居ないし曇っていて寒い。
 3人は白人の親子でここの経営者みたい。早速、おやっさんに聞いてみる。
「カメの日光浴が観れると聞いたのですが、その場所はどこですか?」(マキオの英語力が試された)
「ああ、カメね。居るよ。向こうの湾の端を越えると小さなラグーンが見えてくる。そこは、あの子達の住処だよ。いつもいるよ。カメ達と一緒に泳げるんだ」
「大きさは?さっき見たのは小さかったのさ」
「向こうにいるのは大きいよ」
おやっさんが手を広げて大きさを示す。でかい!!直径1メートルは望めそうだ。
「彼らはとっても可愛いよ。触っても噛み付いたりしないよ」だって・・・。
え?触れるくらい近くなの?え?え?早く行きたい〜〜〜。
「でも、ここから20分くらいかかるよ」
行きます、行きます。何分でも行きますよ。早速歩き始める。マキオもきょんこも、このトレッキングをなめていたので、なんとサンダルで来てしまった。それが過ちだった。砂浜が岩場に変わり、例の真っ黒溶岩のぼこぼこ、がたがたの突き出た硬い岩の上をえんえん歩いた。足の裏が痛い。更には突き出た岩に足があたって、足の皮がめくれて血が出た。いてえ〜〜。でも,カメのためだ。
 見渡す限りの溶岩地帯になり、その向こう岸のラグーンがどこなのかさっぱりわからん。道しるべなのか、白いサンゴ礁が2、3メートルおきに置かれている。そのサンゴがカメの住みかへの道なのかどうかわからんかったけど、とりあえずサンゴの通りに進んだ。
 マッキはだんだん不機嫌になってきた。だって20分はとっくに過ぎてるのに、ずっと溶岩なんだもん。どこにラグーンがあるっていうのさ。そういえばハワイの人に道を聞くと、「そんなに遠くないよ。近いよ」というのが、私達日本人には果てしもなく遠いと感じられるシーンが多い。彼らの感覚が我々とは違うのか、とにかくいくら歩いてもラグーンはない。
 小1時間は歩いただろうか。見えた。なんて奇麗な色なんだろう。エメラルドグリーンの小さな入り江が真っ黒の溶岩の向こうに広がっている。時々、小さなため池みたいに水が岩に溜まっていて、良く観ると色とりどりの熱帯魚たちがすいすい泳いでいる。こんな小さなため池にもだよ!!びっくりした。ここから観る風景は、まさしくハワイの秘境という気がした。
 マッキは先に行ってしまっているので、1人でセルフタイマーで何枚も気取って写真をとってしまった。だってあまりにも奇麗だから。誰もいない。誰にも知られていない、そういう奥まったところのパラダイスだ。入り江なので波がほとんどない。澄んだ水。深さもそれほど深くない。底の砂まで良く見える。ここで泳げば赤や黄色の魚達と一緒に泳ぐことが出来る。あ〜〜。ここで泳ぎたい。もっと速く知っていたらなあ・・・。
 そんなことを思っているうちに、ラグーンの向こう岸に目をやった。すると何だろう?こんもりと盛り上がった灰色の物体が寄り集まっている。石だろうか?何匹ものカメが横たわっている姿を想像して夢見て歩いていると、そこらじゅうにころがっている石が何でもカメに見えてくる。さっきから何度も「あっ!!カメだ!!」とか絶叫して、近づくと石だったってことを連発していたので(そのせいでマッキは不機嫌になった)、軽々しく「あ!カメだ!!」とはもう言えない。
 でもなあ、なんかあの盛り上がり方があの時みたカメの甲羅に似てるんだけど。6個くらいの大きな石達がのそのそ動いているように見える。
「ねえ、マッキー、あれカメじゃないかなあ・・・」
恐る恐る、しかし希望に満ち溢れて口に出してみる。
「え?本当だ!!ほんとだよ。カメだよ!!」
もうそれからのことは無我夢中であんまり覚えてない。とにかく足から流れる血をものともせず、必死でマッキを追い越して凄いはやさで向こう岸にまわったと思う。近づけば近づくほど、その石がカメであることは明らかだった。胸が高鳴る。興奮の一瞬(カメごときで何を・・・と思われてもしかたがない。でも本当のこと)。


 カメ達は6匹いた。でかい奴。そんな至近距離で観たのは初めてなので、ちょっと怖い気もする。みんな太陽にあたりつつ眠っている。大きな甲羅からちょこっと顔をだして、砂にこすりつけるようにして眠っている。可愛い!!カメ達に3メートルくらいまで近づくと、眠そうな顔をこっちに向けて動き出す。「うるさいなあ,邪魔するなよ」ってな感じ。なるべく静かに近づいたのだが、どうしても気づかれてしまう。
 きっと彼らは仲間のカメたちよりネボスケで、みんなが日光浴を終えて海に出かけてしまってもまだ寝ている残りの6匹なんだろう。だって、もう時間が遅いもの。
 私達に気がついて、けだるそうに動き出し水の中に逃げてしまった。が、水に入ったとたん、早い早い。触ろうとしたけど逃げられた。あっというまにラグーンの真ん中まで行き、顔をぴょこっと水面に出す。そして息継ぎ。「ぷうはっ!!」
うわあ!!なんて大きい息継ぎの音。デジカメに録音しておきたい。あんな音が出るなんて知らなかったあ。感激!!
 私は結局、カメの近く30センチくらいまで近づいてしまったけど、気がつくとすぐそばに立て札があった。
「カメに1フィート以上近づかないで下さい」
カメリサーチをしている研究所のものだった。立て札の横に変なカメラみたいなのが埋まっている。??これでカメ達の一日を撮影しているんだ!!はっと気づいた時はもう遅かった。私はバッチリ写ってしまっている。なんだ、この変な日本人・・・。

 とにかく感動のカメとの遭遇だった。この嬉しさはなんと表現してよいか分からない。だから写真を載せます。私のハワイ島での最大の収穫だった。
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