ハワイでホエールウォッチング
WHALE WATCHING IN HAWAII

ザトウクジラ

ホエールウォッチングのシーズンはいつ?

冬になると、ハワイ周辺の海にはたくさんのザトウクジラがやって来ます。夏の間、アラスカ沖の北極海でたっぷりエサを食べた鯨(くじら)は、冬になると暖かいハワイの海で出産や子育て、繁殖を行います。ザトウクジラがハワイ近海を訪れるのは、12月初めから4月初めにかけてです(年によって若干異なります)。この時期はハワイ各島の周辺で鯨の姿を観察することができますが、特に鯨が多く集まるマウイ、ラナイ、モロカイの3つの島に囲まれた海域は、ザトウクジラ保護区に指定されているのでホエールウォッチングに最適です。

ザトウクジラの尾
間近でクジラを見られたら感動間違いなし

ホエールウォッチングはクルーズがおすすめ

運が良ければ海岸線から沖を泳ぐクジラの姿を見つけることができますが、どうしてもクジラの姿を見てみたい方はクルーズを利用することをおすすまします。ホエールウォッチングのクルーズはオアフ島やハワイ島でも参加できますが、オアフ島やハワイ島周辺はクジラの数が少ないので、確実にクジラに会いたいのであれば、ホエールウォッチングのツアーが盛んなマウイ島で船に乗るのがいいでしょう。マウイ島では多くのツアー会社がホエールウォッチングを行っていて、使用されている船も1,000人以上が乗れる最新鋭のハイテク船から少人数で楽しむセイルボートまで大小様々なものがあります。

ホエールウォッチングのクルーズ船からくじらを探す人々
船の上でくじらを探す人々

ホエールウォッチングのツアーが最も多いのはマウイ島のラハイナ港で、各社とも朝8時前後から1日2~4回のクルーズが出航しています。ツアー料金は大人30~50ドル程度で、朝一番に出発するツアーは割安な料金設定になっていることが多いので、早起きをして桟橋に行ってみるのもいいでしょう。子供料金は、12才以下無料のところもあれば大人と同じというところもあり、ツアーによって幅があります。船上での食事やホテルへの送迎が含まれている場合は料金がやや高めに設定されています。クルーズの所要時間はおよそ2時間半です。

ザトウクジラの尾びれ
こんなシーンが見られるかも

多くのツアーでは船上での説明は英語のみですが、言葉が分からなくても十分に楽しめるので心配ありません。クジラが海上に現れると、「10時の方向」「3時の方向」という具合にクジラがいる方向を時計の針の位置で教えてくれます。言葉は通じなくても、クジラを発見した時の感動は他の参加者たちと分かち合うことができるでしょう。どうしても日本語での説明が聞きたいという方は、限定されたツアーで日本人ガイドが乗船している船もあるので探してみるといいでしょう。また、鯨の生態に興味がある人には、海洋学者がクジラの生態をわかりやすく解説をしてくれる「パシフィック・ホエール・ファンデーション」のツアーもおすすめです(英語のみ)。

ハワイ近海ではクジラを保護するために、いくつかの厳しい規制があります。エンジンを積んだ船だけでなく、カヌーやシュノーケルでもクジラから100ヤード(約91.4メートル)以内に近寄ることはできません。クジラの方から近づいて来た場合には、船のエンジンを止めてクジラを傷つけないようにしなくてはなりません。子供のクジラは好奇心旺盛なので、クルーズ船の近くに現れることもあるようです。

クルーズ船の近くに現れたザトウクジラ
船の近くにクジラが現れると歓声が上がります

クジラが見られなかった場合

マウイ島周辺にはたくさんのクジラが訪れているので、クルーズに参加したのにクジラを1頭も見ることができなかったというケースは滅多にありません。しかしながら、相手は自然ですからクジラの姿を見つけられないこともあります。そのような場合、ほとんどのクルーズ船では「クジラの姿を見られなかったら、シーズン中にもう一度無料で乗船できる」という保証をしています。

船と一緒に泳ぐ好奇心旺盛なイルカ
船の側にイルカがやってくることも

ホエールウォッチングのクルーズ乗船にあたって

海上は日差しが強くて紫外線も多いので、日焼け止めを塗って帽子、サングラスを忘れずに用意しましょう。船酔いが心配な人は、乗船の30分前に酔止薬を忘れずに飲んでおきましょう。船上ではアルコール飲料は避け、喉が乾いた時には炭酸飲料を少しずつ飲むようにします。ちなみにハワイでは船酔い防止にパパイヤが効果があると言われています。クジラは船の近くに現れるとは限りません。小さなものでいいので、双眼鏡を持って行くと役に立ちます。

遠くで潜行体制に入るザトウクジラ
こんな時、双眼鏡を持っていれば最高です

ホエールウォッチングの見どころ

ザトウクジラにはいくつかの行動パターンがあります。事前にこれらを覚えておくと、クジラを見つけやすくなるだけでなく、行動の意味が分かって興味深く観察できるでしょう。ザトウクジラの主な行動パターンは次の通りです。

ブロー

ザトウクジラのブロー
ブロー

ザトウクジラの姿を観察できるのは、主にクジラが息継ぎのために水面に現れた時です。ザトウクジラは水面に上昇すると、呼吸のためにまず頭の上の潮吹き孔から高さ4~5メートルの潮を吹き上げます。子供のクジラは約3~5分おきに、大人のクジラは約10~15分おきに潮を吹くといわれています。この潮吹きはブローと呼ばれ、海上でクジラの姿を見つける際の目印になります。

フルーク

ザトウクジラのフルーク
フルーク

海面に出て息継ぎをしたクジラは、次に背中を丸めて潜水します。通常は間隔の浅い潜水を数回くりかえした後で、10分~15分の深い潜水を行います。フルークはザトウクジラが深く潜行する時に見せるポーズです。尾柄をまっすぐ突き上げて尾びれの裏側の模様を見せて潜るのをフルーク・アップ・ダイブ、尾びれを伏せたまま潜るのをフルーク・ダウン・ダイブと呼びます。

ブリーチ

ザトウクジラのブリーチ
ブリーチ

ブリーチはザトウクジラの動きの中で最もダイナミックなもので、両方の胸ビレを使って上体を宙に投げ出して跳躍するものです。クジラの全身の3分の2近くが海面に現れ、大きな水しぶきが上がります。

ヘッドスラップ

ザトウクジラのヘッドスラップ
ヘッドスラップ

ヘッドスラップは、体を水面上に90度に近い角度で勢いよく突き出して、頭を海面に叩きつけるようにするもので、ブリーチの一種とも言われています。その高さは約6mにもなり、迫力があります。

ザトウクジラの基礎知識

ザトウクジラとは

ザトウクジラ(英名:Humpback Whale)の平均体長はオスが13メートル、メスが13.5メートルで、平均体重は35トンです。背部はほぼ黒色で、腹部は白色に斑点があります。顎の周囲に生えているヒゲに神経が通っており、潮の流れや海水の温度などを感じるセンサーの働きをしています。尾ビレの白と黒の模様は個々のクジラごとに異なり(人間の指紋のようなもの)、個体の識別の手がかりとなっています。北半球のザトウクジラは6~10月の夏の間をアラスカや北極海周辺の海域で過ごし、11月頃から南に回遊してハワイやメキシコ沖の太平洋で冬を過ごしています。

上空から見たザトウクジラ
体長10メートル以上のザトウクジラ

ザトウクジラの鳴き声

ザトウクジラは、海中で他のザトウクジラとコミュニケーションするために音波を発します。その中で有名なのは「クジラの歌」と呼ばれる雄クジラの鳴き声です。ザトウクジラにはまだ謎の部分が多く「クジラの歌」もそのひとつですが、繁殖シーズンに発せられることから「クジラの歌」は雌クジラへの求愛ではないかと考えられています。短いときで5分、長いときには20~30分も続く「クジラの歌」にはいくつかのフレーズが存在し、繁殖シーズンが深まると歌は少しずつ変化をみせます。実際に聴いてみると「クジラの歌」はとても神秘的で、どことなくもの悲しい調べです。ホエールウォッチングを行っている船にはスピーカーを載せているものもありますから、運が良ければ「クジラの歌」を聴くことができるでしょう。

海中のザトウクジラ
海中のザトウクジラ

ザトウクジラの子育て

ザトウクジラの母親は波が穏やかで温暖な浅い海域で子育てをします。1月の終わり頃になると、母クジラにピッタリ寄り添って泳ぐ可愛い子クジラの姿が見られるようになります。もともとザトウクジラは海岸近くに群れ集まる傾向があるため、運がよければ海岸線から母子クジラが仲良く潮を吹く姿を観察できるかもしれません。母子クジラは後ろに、もう1頭別のクジラを伴っていることがしばしばあります。これは「エスコート」と呼ばれる成熟した雄クジラで、母クジラの次の子供の父親になるチャンスを狙っているものです。母クジラは何ヶ月もの間、子クジラを母乳で育てますが、父親となるクジラは繁殖の時だけ母クジラに寄り添い、その後の出産や育児に携わることはないということです。

ザトウクジラの母子
ザトウクジラの母子